ポツポツと雨が振って降っていた。
冷たい冬の雨だ。
事務所から歩いて10分の場所にあるマンションへ向かう成実の足取りは重い。
先代の舎弟である遠藤に事務所でこっぴどく叱られた後だった。
いつも当然のように隣にいる綱元は、先代の若頭の舎弟である原田とともに敵対組織である豊臣会がの二次団体へ話をつけに行ってしまった。
事の発端は数日前だ。
集金に出ていた下っ端がボコにされて事務所戻ってきた。
たまたま事務所にいた綱元が数人の舎弟を連れて下っ端をボコにした相手を散々にぶちのめし、奪われた上がりを取り返した。
この界隈で10代続くヤクザである龍正会の上がりに手を出したのだからそれくらいは当然の報復だと思われたが、相手が悪かった。
豊臣会の二次団体の下っ端だった。
敵対とは言っても一触即発の冷戦状態を保っている現状で、火種は早めに消しておくのが賢い。
大っぴらに戦争をするには金と手間がかかりすぎる。
そう判断した原田が直々に繋ぎを取り、今回の件はなかった事にしろと話をつけに当事者である綱元を引っ張って行ったのだ。
成実には何も知らせずに行われた今日の会談を、組長たる成実が快く思うはずもない。
今から行くから車を出せと事務所で暴れ回った挙句、綱元は俺のものだと喚いたのがいけなかった。
会談をぶち壊すどころか、組長としての自覚が足りんと遠藤に説教を食らう事になったのだ。
50代60代の組長が当たり前のこの世界で、たかだか25歳の成実が舐められない為には虚構であっても威厳ある組長であるしかない。
若すぎる上に、当初は組長になどなる予定のなかった成実にそれを求めるのは酷だと構成員の誰もが知っているが、組のメンツを考えればそれも致し方ない。
メンツと信念だけでしか生きて行くことのできない男たちの世界なのだ。
組のメンツと自分の感情に板挟みになり、そろそろ煎餅にでもなろうかという段になって成実はマンションのエントランスの鍵を解錠する。
餃子の皮になってしまう前には部屋に辿り着けそうだが、問題はそれを阻止してくれる人間がそこにいるかどうかだった。
成実を送り出した遠藤は、もう帰っているはずだからと言っていたが、元は綱元の兄貴分である原田がすんなり綱元を帰しているかどうかである。
革靴の底を引きずりながら向かったエレベーターには調整中の紙が貼られていた。
コートのポケットに手を突っ込んだ成実は舌打ちして非常階段の扉を開ける。
3階まで上がった成実はスーツの内ポケットから煙草の箱を出して中身を咥え、地上より強い風になかなか点かない火に再び舌打ちする。
雨に濡れた煙草を吐き捨て、踊り場に踏みつけてから一気に7階まで駆け上がった。
再びマンションの中に入る頃には息切れで脇腹が痛んだが、目の前にある扉を開ければ開放されるのだと半ば強迫観念にも似た思いで足を動かす。
鍵を開ける間ももどかしく、鍵穴に鍵を残したまま玄関に倒れこんだ。
「成実さん?どっか怪我でも…」
鍵を開ける音を聞いて玄関まで出てきていた綱元が慌てて成実に駆け寄る。
しゃがみ込む綱元の肌蹴たワイシャツの襟を掴んだ成実は荒い呼吸の合間に呻くように言った。
「鍵抜くの、忘れた。」
「怪我、じゃないんですか?」
「階段…つかれた。」
「まさか階段でここまできただけでそれってことですか?」
目を丸くした綱元の襟を離して玄関に伸びる成実を跨いだ綱元は安堵とも呆れとも言えないため息を吐いて、成実が抜けなかった鍵を抜いた。


「エレベーターが調整中だったからって何も走って上がってくることないでしょう?」
玄関に伸びた成実の靴と濡れたコートを脱がせ、動けないと宣う成実を抱えて居間に戻った綱元はキッチンで自分用のコーヒーと成実にココアをいれながらため息混じりに言った。
「るっせーな。雨降ってて寒かったんだよ。」
綱元が渡したタオルで濡れた髪を拭きながら成実は唇を尖らせる。
遠藤の次は綱元の説教だ。今日は厄日か何かなのだろうか。
ココアの入ったカップを差し出す綱元の説教はまだ終わらない。
「だいたい事務所に傘の1本くらいあったでしょうが。あなたはすぐ風邪を引くんですから、傘くらい差して帰ってきたらどうなんです。」
「あーもーマジ綱元うっせえ。俺に黙って豊臣の二次だか三次だかに乗り込んだくせによ。」
言って受け取ったカップに口をつける。
ようやく綱元が黙った。
「なんで俺になんも言わなかったんだよ。」
ソファに座ったままタオルを床に投げ出して、斜め前に立つ綱元を下から睨みつける。
綱元はコーヒーをゆっくりと飲み、口を開いた。
「そんなこと言ったら坊は死にに行くぞって原田さんに脅されたからです。」
「んだよそれ。俺、そんなに馬鹿そうか?」
「馬鹿と言うか無鉄砲すぎるんです、あなたは。ただでさえ豊臣会が絡んでるなんて聞いたら戦争だとか言い出しかねないのに、火種が俺じゃあ結果は見えてますからね。」
言ってテーブルを挟んだ向かいのソファに座る綱元の耳に、信用ねえなと苦笑する成実の声が届く。
それを聞いた綱元は普段表情を映すことの少ない漆黒の瞳を柔らかく細めた。
暫く俯いてカップの淵を噛んでいた成実はそれを雑多に散らかったテーブルの上に置き、背凭れに頭を預けて綱元を見る。
「俺もそこまで間抜けじゃねえ。確実に潰す手段くらい用意する。次からはちゃんと言えよ。俺はお前のやったことのケツ拭かなきゃいけねえんだ。」
まっすぐに告げられる言葉に唇を緩く笑みにした綱元がそうですねと答える。
「次からはそうします。」
「で、結局どう収まったんだ?」
「もう豊臣会に話が回ってたらしいんで、明日若頭が直々に頭下げに来るそうです。」
「ま、うちのメンツは保たれたわけか。」
ええと小さく頷く綱元を見つめていた成実が立ち上がり、テーブルの上に膝を乗り上げる。 肉の薄い綱元の膝に短く爪を切り揃えた成実の細い指先が触れた。
「ここまでは組長の話。こっからは俺の個人的な話。お前は俺のもんだ。俺の知らないとこで他の奴にのこのこ付いてってんじゃねえよ。それが叔父貴でも、だ。事務所で喚いて怒られた。お前のせいだ、責任取れ。」
膝を撫で回していた手を綱元の太ももについた成実が反対の手で綱元の胸倉を掴み、鼻先すれすれまで顔を近付けた。
拗ねた子供のようなその表情を見て綱元はふと笑う。
「何がおかしいんだよ。」
「本当にあなたは横暴ですね。」
「暴君じゃねえとやってらんねえんだよ。経験も知恵もねえ若僧が自分より年上の構成員山ほど抱えて、棺桶に片足突っ込んだ妖怪みてえなジジイ共と渡り合おうってんだからな。察しろ。」
「で、どうすれば責任が取れるんですかね、俺は。」
目にかかる成実の濡れた髪をどけてやりながら綱元は小首を傾げて笑う。
相変わらず目の前の男は凶悪な顔でじっと綱元の目を覗き込むだけだ。
「とりあえずキスして全部忘れさせてくれたら許す。」
言って少し顎を上げた成実の睫毛がゆっくりと伏せられる。
一瞬複雑な表情を浮かべた綱元はしかし、誘われるまま成実の唇に自分のそれを重ねた。
まだ湿った後頭部に手を回して引き寄せ、行儀悪くテーブルの上に乗っている成実の細い体を抱き寄せる。
逆らわない成実は乱暴に口の中を掻き回す綱元の胸にべったりと張り付き、その膝に乗り上げた。
無遠慮な舌が舌の裏を擽り、成実の整った歯列の内側を舐めて尖った犬歯の先を掠める。
成実の脚が崩した雑誌と新聞が大きな音を立ててテーブルから落ちた。
その横で綱元のカップが倒れて残っていたコーヒーがテーブルに広がり、それだけでは止まらずに床のラグに細く滴り落ちたそれは白いラグを汚す。
「成実さん、コーヒー。」
吸い上げていた成実の舌を開放し、その先を甘噛みした綱元が湿った吐息と共に言う。
鬱陶しげに薄く目蓋を開いた成実は浅く乱れた呼吸の合間に綱元の唇にペロリと舐めた。
「お前、俺とコーヒーどっちが大事だよ?」
「成実さんやコーヒーよりラグのシミが気になります。」
そう言って再び音を立ててキスをした綱元は、膝の上を陣取って上半身に絡みつく成実をどけて立ち上がろうと藻掻く。
その手に指を絡めてソファの背に縫い止める。
「ラグなんて何枚でも買ってやる。邪魔すんなよ。」
パタパタとコーヒーが落ちてラグに跳ねる音を背中に聴きながら、成実は綱元の唇にかぶりつく。
綱元が諦めて成実の手を振り払い、スーツのジャケットを脱がせにかかる。
ここまで来ては引き返すこともできない。
成実の襟のバッジがテーブルに当たって硬い音を立てる。
「バッジは大事にしろよ。」
「文句言うなら自分で脱いでくださいよ。あなたも十分邪魔です。」
吐息のかかる距離で咎める成実に返す間も綱元の手は休まずワイシャツのボタンを外していく。
肌蹴たワイシャツの中に入り込む綱元の指先が脇腹に浮き上がる傷を引っ掻いて、腰の窪みを滑る。
「ベッド行きます?」
閉じたピアスホールが並ぶ耳朶をねぶりながら綱元が成実の耳に声を押し込む。
「めんどくせえからここでいい。」
上ずった声で答える成実が嫌がるように頭を振り、癖のない黒髪が綱元の鼻先を擽った。
膝の上の成実の肩を押してソファに寝かせた綱元は手早くベルトをはずし、下着ごとスラックスを引き抜いて床に落とす。
ソファの下に落としたベルトのバックルが鈍い音を立てた。
剥き出しになった無駄のない脚の間に割って入った綱元は、目元を腕で覆う成実の腕を退けた。
「それ、とってください。」
成実は怠そうにテーブルの上に出しっぱなしになっているローションのボトルを取り上げる。
成実に覆い被さって口内を舌で犯しながらそれを受け取った綱元は自分のスーツが汚れるのも構わずに中身を成実の腹にぶち撒けた。
冷たさに一瞬息を詰めた成実の舌が縮こまるのを軽く噛んで阻止した綱元の指先が体内に押し込まれる。
ゆるゆると内部を探る指先が容赦なく快い所を攻める。
成実はお前も脱げと言いかけた口で途切れ途切れに呼吸を紡いだ。
その唇を容赦なく塞いだ綱元は引き抜いた指にもう一本添えて押し込み、呼吸を奪われたまま喘ぐ成実の筋張った首が反らされて綱元の唇を振り切る。
「てめ、殺す気か…っ!」
鋭く息を吸った成実は、息を吐く勢いのまま凄んだ。
楽しそうに唇の左側を上げた綱元の目の奥が残酷さを伴って透徹するのを見た成実の背に快感とは別の震えが走る。
人を殺す男の目だ。
狡猾で無慈悲な殺人者の目が成実を見ている。
粘性の音を立てて指が引き抜かれ、凶器のような熱の塊がゆっくりと体内を侵食する。
受け入れているはずなのに奪われる錯覚に、成実は唇を噛む。
これ以上失うものなどありはしないと嘯くその口で、奪うなと叫び出しそうだった。
ぎっしりと埋まる熱量がゆっくりと蠢き、成実は柔らかな筋肉に覆われた背中を反らせる。
焦らすようにゆっくりと腰を進めた綱元は食いしばった成実の唇を舐めて抉じ開ける。
喉に届きそうな所まで上顎を舐め、僅かに欠けた奥歯を探りながらぐるりと腰を押し付けると成実の喉の奥で短く悲鳴が上がった。
「っ、は…あんま、焦らすなよ。」
「がっついても怒るでしょう?」
「怒んねえよ…っ、今はな。」
綱元の唇を振り切るように首を振った成実の細い脚が綱元の腰に絡まり、引き寄せるようにして奥へと押し込む。
はやく、と掠れた声が耳に吹き込まれ、やはり暴君だと思いながら綱元は腰を揺らした。
メンツと建前の骸の上で今にもバランスを崩しそうな玉座に座る不安定で不恰好な暴君。可哀想で愛しい男。
ギリギリまで引き抜いて、一気に押し込む。
成実の喉から絞り出すように甲高い嬌声があがり、そして尾を引いて掠れていく。
「やばい、そこ、気持ちいい。」
「知って、ます。」
行き場のない成実の手がソファの背を掻き、遂には綱元の背を抱き寄せる。
綱元は細い眉を顰めて顔を上げた。
都合反らされたその首筋に成実が歯を立てる。
着たままのシャツに歯を引っかけて、食いちぎるように噛み締めたせいでボタンが飛んだ。
小さく舌打ちした綱元の手が汗の浮く成実の額をソファに押し付け、悲鳴のようにあがる喘ぎごと唇を貪る。
早くなった律動に、成実の体が強すぎる快感から逃れようと身を捩るのを押し付けた胸で押さえた。
「も、むり、イく。」
「どうぞ、お好きに。」
口の中を荒らされながら叫ぶ成実に、唇は離さないまま言って強く奥を穿ち、浮き出た鎖骨に思い切り歯を立てる。
痛みになのか快感になのかわからない悲鳴を上げて成実が達し、二人の腹を暖かいものが濡らす。
それでもなお動く事をやめない綱元の襟足を成実の手が力なく掴み、やがてソファの背を叩いた。
「やだ、やめ…っ、」
ぴんと伸びた爪先が空を掻き、骨ばかり目立つ膝が震える。
喘ぎと拒絶を紡ぐ煩い唇を塞ぎ、快感のままに体内を抉る綱元の腕を掴んだ成実の指先が白く色をなくした。
鼻に抜ける声を聞きながら夢中で貪っていた綱元の唇が離れて、成実の肩に額を付けた綱元が背を震わせて達し、成実の体の上に脱力して伸し掛かる。
半端な快感に呻く成実の下半身に指を伸ばした綱元は再び上がる嬌声が掠れるのを聞きながらそこを愛撫する。
「も、いいっ…!やめ、」
「半端じゃ、苦しいでしょ。」
やめろと喚く成実を追い詰めながら緩く腰を揺すれば簡単に陥落する理性。
成実の悲鳴が湿気に淀んだ空気を掻き回し続けた。


ベッドの上で目を開けた成実は、隣で眠る男の顔を見た。
カーテンの向こう側はぼんやりと明るい。
明け方なのか、それとも雨が降っているだけでもうすっかり朝なのかは判断しかねた。
ゆっくりと寝返りを打ち、サイドテーブルの上の煙草を取った。
開けた箱の中身は最後の一本だ。
枕に肘をついて火を点ける。
裸のままの肩からシーツが滑り落ちた。
綱元がここに住むようになって、3年が経つ。
代替わりの披露目の場に出るために白袴に着替えるのを手伝っていた綱元が、俺はあなたを裏切らないと言った日から、この男はここに住んでいる。
それまで、ここには違う男が住んでいた。
本来ならば、今成実が手にしている権力と地位を手に入れるはずだった男だ。
その全てを捨てて、男は今、ホストをしている。
愛する人の夢を叶えるために、この繁華街のNo.1であり続けている。
男が戻るとは思えなかった。3年間、ずっと。
先代の息子でありながらこの世界を捨てる事ができたあの男を、恨んでいないといえば嘘になる。
組のメンツと自分の欲求に板挟みになる苦しみを知らずに生きる男を羨んでいないといえば嘘になる。
だが、ここには成実を裏切らないと誓った男がいる。
組のためなら死んでもいいという男たちがいる。
成実の父を殺した男がいる。
逃げ出しそうになる成実をここに繋ぐものがありすぎる。
逃げ出したいと叫ぶにはこの世界に染まりすぎたのだ。
10代続くヤクザのメンツは、若い成実が背負うには大き過ぎるが、道理と建前を通すことにはもう慣れた。
虚構の暴君を演じれば演じるほど息苦しさに窒息する。
枕の上に長くなった灰が落ちた。
成実の携帯が鳴る。
唸る綱元に背を向けて電話を取った。
「どうした?」
『原田です。豊臣の跡目が殺されました。』
「は?」
綱元、そこにいますね?と確認する原田にああと曖昧に頷き、肩越しに綱元を見た。
むき出しの腕がシーツの上に伸びている。
『さっき豊臣の若頭から連絡があって、今日のはまた後日にしてくれって言われまして。」
「綱元のやつか。」
『そうです。坊、そういうことなんで今日顔出して貰えますかね。』
「言われなくてもそうする。30分で行く。」
お待ちしてますと言って切れた携帯を放り出して、成実はベッドを出た。
クローゼットからスーツを出してベッドに放り投げる。
「成実さん?」
掠れた声が背中にかかったが、成実は振り返らないままワイシャツを選ぶ。
ストライプかグレーか。
黙る成実の後ろで衣擦れの音がした。
今日はグレーに決まりだ。
「事務所行って来る。豊臣の跡目が殺された。いろいろ相談して来る。」
振り返らずにワイシャツを羽織りながら早口に言う。
背中に感じる空気が一瞬強張った。
「俺も行きます。」
「お前、叔父貴に疑われてたぞ。」
ボタンを留めながら振り返った成実は笑うように言ってスーツにかかったままのクリーニングのビニールを破る。
「どうして?」
「さあ?綱元いるかって聞かれた。」
「成実さんじゃあるまいしそんな無茶はしませんよ。」
成実の隣に立った綱元がスーツを出しながら言った。
スラックスを履いていた成実はムッとした顔で綱元を振り返ったが、綱元は涼しい顔でシャツを選んでいる。
今日は二枚襟の白になったらしい。
「俺だってしねえよ。」
クローゼットの前でシャツを着ている綱元に手を差し出すと黙ってベルトが手渡される。
「バッジは?」
「リビングのテーブルの上に。」
着替える綱元を置いて先に居間へ向かう。
窓の外で隣のビルの屋上が雨に濡れている。
舌打ちしてジャケットを羽織り、テーブルの上のバッジを襟に着けた。
一歩遅れて出てきた綱元に並んでいたバッジを投げ、キッチンの冷蔵庫を開ける。
牛乳のパックを出してそのまま喉を鳴らして飲んだ。
「朝飯、食えなくなりましたね。」
「途中でなんか買えばいいだろ。」
「いや、雨なんで若いのに買いに行かせましょうか。また傘差さずに出歩かれても困りますし。」
「お前ちょっといろいろと待てよ。」
成実が言うが、綱元は何食わぬ顔で時計を着けてさっさと玄関へ向かっている。
牛乳は出したままでその後を追った。

End

許せないものの方が多いが、失くせないものの方が重い。

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