何が欲しいと問われて、その答えを出そうとしても俺はきっと返答に困って忍装束の裾を眺めるだけだろう。
だって俺様はアンタたち武家の普通や、当たり前に持っているものが何かを知らない。
そして恋歌や漢詩や笛や絵に感じ入ることが出来るような高尚な心も持ち合わせていない。
だから、俺様は何も要らないと答えた。
うそつくんじゃねえょ、と熱を孕んだ腫れぼったい唇が言った。
それはまるで甘やかすように俺様の口を吸った後の唇のようだった。
(でも、そんなことをした覚えはなかった。)
意地悪く唇を撫でる人差し指を舐める。
血と精液の味がした。
ああそうか、と思い当たる。
俺はね、アンタのややこを孕んで、アンタを殺してしまいたいんだ。
死んだアンタの代わりに、孕んだややこを俺様だけのアンタに育てる。
すごくいい考えだと思ったけど、俺は男で孕めやしない。
だからアンタを殺して、アンタを骨まで残さず食べてあげる。
そうすればほら、アンタは俺から逃げられない。
「って言う夢を見たわけよ。」
「それで?」
「いや、なんか俺様怖いなー…なんて。」
「そうか?そんなお前も悪くない。」
「アンタ、意外と悪趣味なんだね。」
「俺がいなきゃ死んじまいそうだなんて、可哀想で可愛いよ。」
図星を刺されたような気分で酷く居たたまれなかった。
End
可哀想なお前を囲って優越感に浸ってる。